谷底に位置するという特異な地形を持つ渋谷。雨が降ると周辺のすり鉢状の斜面から水が集まりやすいという側面があります。しかし、現在の渋谷駅周辺で大規模な水害を目にする機会は減っているように感じられます。その背景には、都市を浸水から守るための緻密な治水システムが隠されているようです。
本記事では、渋谷川の無骨なコンクリート壁と、地下に広がる巨大空間に焦点を当て、見えないインフラの機能美について紐解いていきます。
渋谷川のコンクリート壁に隠された水害対策
渋谷を歩いていると、深く分厚いコンクリートで両サイドを固められた渋谷川の姿に目を奪われることがあります。自然な河川とは異なるその姿には、都市ならではの切実な理由があると考えられています。
谷底の街を守る「三面張り」の役割
渋谷川の底も壁もコンクリートで覆う構造は「三面張り(さんめんばり)」と呼ばれています。ビルが密集し、川幅を広げるスペースを確保することが難しい都市部において、限られた空間で大量の雨水を溢れさせずに流し切るための工夫と言えます。
深く掘り下げ、垂直に壁を立てることで、街を水没から守る巨大な排水溝としての機能に特化しているようです。装飾を省き、治水機能に振り切ったその姿には、ある種の機能美が感じられます。
渋谷駅地下に広がる巨大な雨水貯留施設
水害対策は、地上を流れる渋谷川だけにとどまりません。渋谷駅東口の地下広場のさらに深部には、「渋谷駅東口雨水貯留施設」と呼ばれる巨大な空間が設けられています。
プール約13杯分の雨水を預かる仕組み
地下約25メートルの位置にあるこの施設は、約4,000トン(25メートルプール約13杯分)もの雨水を一時的に溜め込む能力があると言われています。
激しいゲリラ豪雨の際、勢いよく流れ込む雨水で施設が傷むのを防ぐため、「ドロップシャフト」と呼ばれるらせん状の水路が採用されており、水の勢いを和らげながら流し込む工夫が施されているようです。天候が回復した後は、ポンプを用いてゆっくりと下水道へ排水されます。
3段構えで機能する渋谷の治水システム
地下空間を水害から守るためには、単一の施設ではなく、複数の防衛網を組み合わせた連携が重要視されています。雨水のピーク時における負担を分散させるための、3段構えのシステムを整理してみました。
| 防衛段階 | 役割 | 仕組みと設備 |
|---|---|---|
| 第一陣 | 流す | 地下の下水管とコンクリートで固められた渋谷川を活用し、雨水を海方面へ速やかに排出します。 |
| 第二陣 | 一時的に預かる | 処理能力を超えそうになった場合のみ、地下の雨水貯留施設に水を逃し、ピークが過ぎるのを待ちます。 |
| 第三陣 | 物理的にブロックする | 万が一地上に水が溢れた際の備えとして、地下街や地下鉄の入り口に設置された防水扉(止水板)を稼働させます。 |
巨大な貯留施設はすべての雨水を飲み込むわけではなく、地下への致命的な浸水を防ぐための貴重なバッファ(緩衝材)として機能しているようです。見えないインフラと各施設の防水設備がパズルのように組み合わさることで、複雑な都市の地下空間が守られています。
参考サイト
渋谷での災害対策として、以下のサイトで情報を確認することができます。
・渋谷区防災ポータル(https://bosai.city.shibuya.tokyo.jp/)