マットPPの「色沈み」を防ぐ。印刷データ作成と特色指定

印刷物を上品に仕上げるマットPP加工と「色の沈み」

パッケージデザインや名刺など、幅広いプロダクトで愛用されている「マットPP加工」。表面のツヤを消し、しっとりとした上質な手触りを与えるこの加工は、デザインの品格を一段階引き上げてくれます。

しかし、デザイナーを悩ませるのが特有の「色の沈み」です。マットPPフィルムは表面に微細な凹凸があるため、光が乱反射し、全体がわずかに白っぽく濁ると同時に、色が暗く沈んで見える現象が起こります。頭の中にある理想のカラーを実際の印刷物で再現するためには、この特性を逆算したデータ作成と的確な指示が欠かせません。

Pantone特色指定のセオリー:コート(C)とマット(U)

色にこだわるプロジェクトでは、Pantone(パントン)などの特色指定が必須です。ここで迷いやすいのが、「C(Coated / コート紙)」と「U(Uncoated / マット紙)」のどちらを指定するべきかという問題です。

印刷指示は「C」、完成イメージは「U」

結論から言えば、マットPP加工を前提とする場合、印刷所への指示は「C(コート)」で行うのが正解です。なぜなら、印刷工程としてはまず表面が滑らかなコート系の紙にインクを刷り、その上からフィルムを貼るからです。インクそのものは同じでも、インクが乗る下地はあくまでコート紙となります。

ただし、クライアントとの仕上がりイメージのすり合わせにおいては「U(マット)」の色見本を見せるのが、プロフェッショナルな進行のコツです。マットPPを貼った後の沈んだ色合いは、インクが染み込んだ「U」のチップに非常に近い見え方になります。「指示はCで出しますが、仕上がりはこちらのUに近くなります」と事前に共有しておくことで、納品後の認識のズレを未然に防ぐことができます。

CMYK印刷で濁りを防ぐ3つのデータ作成テクニック

特色ではなく、通常のCMYKカラーで印刷を行う場合、マットPPによる「沈み」や「濁り」の影響はさらに顕著になります。入稿データを作成する際は、以下の3つのポイントを意識して色を調整しましょう。

1. K(ブラック)と補色を極力抑える

色が濁る最大の原因は、マットフィルムの白っぽさとインクの「K(墨)」成分が混ざり合うことです。意図的にダークなトーンを狙う場合を除き、Kの数値は0%か数%程度に留めるのが鉄則です。また、反対色(補色)がわずかに混ざるだけでも濁りの原因となるため、ピュアで純度の高い色指定を心がけてください。

2. CMYの数値を5〜10%明るく設定する

フィルムを貼ることで、色は確実に一段階濃く(暗く)見えます。最終的に「M100 Y100」の鮮やかな赤に仕上げたい場合、データ上はあえて「M90 Y90」のように少し明るく(薄く)設定しておくことで、加工後にちょうど良い発色へと落ち着きます。

3. 写真画像はコントラストを強めに補正する

ベタ塗りだけでなく、写真が入るデザインも全体がのっぺりとした印象になりがちです。画像補正の段階で、通常よりも少しだけ明るさとコントラストを強めにかけ、メリハリを出しておくことで、フィルム越しでもくっきりとした美しいディテールを保つことができます。

Illustratorで仕上がりを疑似確認する裏技

最後に、作業中のIllustrator画面でマットPPの仕上がりを疑似的にシミュレーションする、実践的なテクニックをご紹介します。

乗算レイヤーでマットPPをシミュレーション

最前面に新しいレイヤーを作成し、アートボード全体を覆う四角形を配置します。塗りを「K10〜15%」、透明度パネルで描画モードを「乗算」、不透明度を「10〜20%」に設定してみてください。このレイヤーの表示・非表示を切り替えるだけで、「加工前」と「加工後」の色の沈みを画面上で比較できるようになります。シャドウ部分が潰れていないか、肌色が悪く見えていないかなど、直感的なチェックに非常に役立ちます。

ただし、入稿前にはこの確認用レイヤーを必ず削除(またはプリント非表示に設定)することを忘れないでください。

印刷技術と加工の特性を深く理解し、データ上でコントロールすることは、デザイナーの腕の見せどころです。事前の緻密な計算で、美しいパッケージデザインを完成させてください。

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