中華料理店で親しまれている「天津飯」。ふんわりとした卵と、とろみのあるあんの組み合わせは、世代を問わず愛される味わいと言えます。しかし、この天津飯が、本場である中国の天津には存在しないことをご存知でしょうか。
今回は、日本独自の進化を遂げた「和製中華」としての天津飯の歴史と、東西で異なる味わいの背景を紐解いていきます。
中国には存在しない?「和製中華」としての歩み
天津飯という名前から、中国の天津地方の郷土料理を連想される方は少なくありません。しかし、実際には中国本土に天津飯という料理はなく、完全に日本で誕生したメニューと考えられています。
日本の食文化において、海外の料理を独自の解釈でアレンジし、日本人の味覚に合うように発展させた料理は数多く存在します。ラーメンや焼き餃子などと同様に、天津飯もまた、日本の風土と料理人の創意工夫によって生まれた「和製中華」の代表格と言えるでしょう。
発祥は東京か大阪か。2つの誕生ルーツ
天津飯がいつ、どこで誕生したのかについては、大きく分けて「東京」と「大阪」の2つのルーツがあると伝えられています。それぞれの発祥とされる説と、現在に至る味の違いを比較してみましょう。
| ルーツ | 発祥とされる店舗(時代) | 味の特徴 | 誕生の由来・背景 |
|---|---|---|---|
| 東京説 | 浅草「来々軒」(戦前) | ケチャップベースの「甘酢あん」 | 「早く食べられるものを」という客の要望に応え、カニ玉をご飯に乗せて酢豚のあんをかけたという説 |
| 大阪説 | 大阪「大正軒」(戦後) | 醤油や塩ベースの「あっさりあん」 | 天津の「蓋飯(ご飯におかずを乗せる丼)」をヒントに、天津産のワタリガニを使おうとしたことに由来するという説 |
このように、ルーツが異なることで、関東では甘酸っぱいあん、関西では出汁の効いた醤油や塩ベースのあんが定着したと考えられています。旅行や出張の際に、地域ごとの天津飯を食べ比べてみるのも、新たな発見があって興味深いかもしれません。
海外からも注目を集める日本食の魅力
近年、日本の食文化は世界中で高く評価されていますが、この天津飯も「ジャパニーズ・オムレツ・ライス」として、海外の方に紹介しやすい料理の一つです。
カニの代わりにカニ風味かまぼこ(カニカマ)を使用すれば、手に入りやすい身近な食材で手軽に作ることができます。日本の歴史と知恵が詰まった一皿として、その誕生の背景とともに海外の友人に振る舞ってみるのも、素晴らしい文化交流になるのではないでしょうか。
日本の食卓で愛され続ける天津飯。その背景にある歴史を知ることで、いつもの一皿が少しだけ特別な味わいに感じられるかもしれません。